AIで仕事が効率化しても、負担が減らない理由
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AIで仕事が効率化しても、負担が減らない理由

生成AIの普及によって、文章作成や資料の要約、データ分析など、さまざまな仕事を短時間で処理できるようになりました。しかし、仕事の効率が上がっても、人間の負担が必ずしも軽くなるわけではないという指摘があります。

この問題を考えるうえで注目されているのが、夏目漱石が1911年に発表した『現代日本の開化』です。漱石は、文明の発展には人間の労力を減らす「活力節約」という方向があると説明しました。

例えば、鉄道の普及によって、人々は以前より短時間で遠くまで移動できるようになりました。現代の生成AIも同様に、人間の時間や労力を節約する技術といえます。

ただし、生成AIには従来の技術と異なる特徴があります。それは、情報を伝えるだけでなく、情報を整理し、文章や分析結果を作成する作業まで担えることです。

従来のインターネット検索では、必要な情報を探した後、人間が内容を読み、比較し、資料にまとめる必要がありました。生成AIを活用すれば、こうした作業の一部を自動化できます。

一方で、仕事の効率化には別の側面もあります。

例えば、毎月100件のデータを確認する業務があるとします。生成AIの活用によって確認作業の時間が半分になれば、本来は作業負担を軽減できるはずです。

しかし、空いた時間を使って確認件数を200件に増やせば、働く時間は変わりません。さらに、処理件数の増加に伴って確認や修正の仕事が増える可能性もあります。

このように、作業の効率が上がることで、かえって仕事の量が増える現象は、経済学でいう「ジェボンズのパラドックス※1」に通じる部分があります。

もっとも、AIの導入によって必ず仕事が増えるわけではありません。効率化で生まれた時間を、休息や教育、業務品質の改善に充てることもできます。

重要なのは、AIによって節約された時間をどのように活用するかという点です。

IT業界に携わるわたしたちは、AI導入の効果を処理件数や作業時間の短縮だけで評価するのではなく、働く人の負担が実際に軽減されたかという観点からも確認することが大切です。

※1 ジェボンズのパラドックス:技術の進歩によって資源の利用効率が高まっても、利用量の増加によって資源全体の消費が増えることがあるという考え方。

出典:佐藤仁『夏目漱石『現代日本の開化』の「活力節約」から考えるAI―効率化しても人間の負担が減らない逆説』