あなたが現在見ているのは AIの成果は何を測ればよい?

AIの成果は何を測ればよい?

  • 投稿カテゴリー:業務

AIを導入した効果を確認するには、「何を成果として測るか」を決める必要があります。しかし、測りやすい数字を選べばよいとは限りません。指標の選び方によっては、本来の目的とは違う行動を促してしまうことがあります。

こうした問題を考えるうえで参考になるのが、「指標が目標になると、その指標は良い指標ではなくなる」という考え方です。

例えば、生成AIを使ったプログラミング支援の成果を「作成したコードの行数」で測るとします。

一見すると、AI導入後にコードの行数が増えれば、生産性が上がったように見えます。しかし、長いコードを書けばよいとは限りません。必要以上に説明を追加したり、同じ処理を長く書いたりすれば、数字だけを増やすこともできます。

そこで、AIの効果を測る場合は、実際の仕事の目的に近いKPI※1を選ぶ必要があります。

プログラミングであれば、「完成した機能の数」「修正した不具合」「サービスの安定性」などが考えられます。

一般的な事務作業でも同様です。

例えば、生成AIを使って問い合わせへの回答文を作る仕事があるとします。AI導入前は、1件の回答作成に平均15分かかっていたものが、導入後に10分になったとします。

この場合、「作業時間が5分短くなった」という数字は分かりやすい成果です。

しかし、回答の間違いが増えてしまえば、利用者から再度問い合わせを受ける可能性があります。そのため、「平均作業時間」だけでなく、「回答後の再問い合わせ率」や「内容の確認で修正が必要だった割合」などを見ると、より実際の成果に近づきます。

AIの成果を測るときには、売上のように直接お金につながる指標だけでなく、開発速度や利用者の満足度など、間接的な指標を使う場合もあります。

ただし、売上も満足度もAIだけで決まるものではありません。広告や市場環境、サービスそのものの変更など、別の要因によって数字が変化することがあります。

そのため、「AIを導入したら数字が上がったので、すべてAIの成果だ」と単純に判断しないことも重要です。

また、AI導入前の数値を記録しておく必要があります。これをベースライン※2といいます。

導入前と導入後の変化を継続的に追跡することで、AI活用が仕事にどのような影響を与えているのかを把握しやすくなります。

指標は一度決めたら終わりではありません。仕事の内容やAIの使い方が変われば、適切な指標も変化する可能性があります。定期的に「この数字は本当に成果を表しているか」を確認することが大切です。

IT業界に携わるわたしたちが取るべき行動の一つは、「測りやすい数字」ではなく「仕事の目的に近い数字」を成果指標として選ぶことです。AIの利用回数や作業量だけを見るのではなく、品質や利用者への効果まで確認することで、より意味のあるAI活用につなげられます。

※1 KPI:目標の達成状況を確認するために設定する具体的な指標です。

※2 ベースライン:新しい仕組みを導入する前の状態など、効果を比較するための基準です。

参考
Adam Richter, “Calculating the Return on Investment (ROI) of AI”, AWS Cloud Financial Management Blog, 2026年8月10日(2026年9月14日閲覧)