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合理性と感性について

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「なぜいつも同じ服を着ているのか」と聞かれたとき、スティーブ・ジョブズは“日々の小さな選択を減らして、大きな決断に集中するため”という考え方をしていた、という話を聞いたことがあります。

そこまで大きな話ではなくても、私も一時期、物をできるだけ減らして「本当に必要なものだけ」に囲まれた、洗練された生活に憧れたことがあります。無駄を削ぎ落とした空間はかっこいいし、身軽でスマートに見えます。判断基準も「必要か、不要か」。とてもわかりやすい軸です。

でも、その基準で選び続けていると、だんだんと楽しみが減っていくことに気づきました。生活は整っていくけれど、どこか味気ない。とくに必要ではないけれど、「かわいいから買っちゃう!」という小さな衝動やときめきが、自分にとっては大事だったみたいです。合理性よりも、その瞬間の感性に動かされるほうが、どうやら性に合っているのだと思いました。

写真は最近いちばんのときめきグッズ

一方で、究極の機能美という考え方もあります。無駄を削ぎ落とし、目的に対してまっすぐであること。その潔さに美しさが宿るデザインも、たしかに存在します。むしろ、そうした緊張感のある佇まいに強く惹かれることもあります。

でも私は「余白」や「ゆらぎ」のような部分にも価値を感じています。必ずしも合理的ではないけれど、ふと目に留まる色づかいや、少しだけ遊び心のあるあしらい。機能を損なわない範囲でそっと差し込まれた感性は、その人やブランドらしさをつくる大事な要素だと思うのです。

すべてを必然で固めるのではなく、ほんの少しだけ“好き”を混ぜること。そのさじ加減によって、同じ情報でも伝わり方が変わることがあります。整いすぎていないからこそ、記憶に残る。正しさだけではなく、体温のようなものが感じられる。私はそんなデザインに惹かれます。

合理性か、感性か、という二択ではなく、その両方をどう同居させるか。削ぎ落とす勇気と、あえて残す勇気。その間で揺れながら考え続けること自体が、デザインの面白さなのかもしれません。