地方の卸売企業がEC※1を立ち上げ、売上を大きく伸ばしたというニュースが話題になりました。
本質は「大きく始めなかったこと」にあります。
DX※2という言葉から、大規模なシステム刷新や多額の投資を連想する企業は少なくありません。しかしこの事例では、まず自分でサイトを作り、商品を一つずつ登録し、試行錯誤を重ねるところから始めています。専門知識が十分でない状態でも、構造を理解しようと手を動かした経験が、その後の改善力につながりました。

ECは単なるオンライン店舗ではありません。商品マスタの整備、検索経由の流入設計、在庫管理、受発注フローなどが連動する業務システムです。これらの関係性を理解せずに外注すれば、表面的なサイトはできても、収益構造までは設計できません。
実際、当初の会社紹介サイトは認知向上には役立っても、売上には直結しませんでした。そこから「販売の仕組み」そのものに視点を移したことが転機となります。ニーズのある商品を継続的に掲載し、検索に拾われる状態を維持したことが、後の需要拡大時に成果として表れました。

IT業界に携わるわたしたちが学ぶべきなのは、DXを特別な改革と捉えない姿勢です。まずは一部業務をデジタル化し、自社で理解できる範囲から始める。小さな成功と失敗の積み重ねこそが、持続可能な変革につながります。

※1 EC:インターネット上で商品を売買する仕組み
※2 DX:デジタル技術で業務やビジネスモデルを変革すること