日本企業ではAIへの投資意欲が高まる一方、全社的で持続的な成果につながっていると答えた割合は13%にとどまり、世界平均の23%を下回ったという調査結果が発表されました。従業員側でも、AIによる生産性向上を実感した割合は57%で、世界平均81%との差が見られます。
この結果から分かるのは、AIを導入することと、仕事の成果につなげることは別だという点です。生成AIなどのツールを使える状態にしても、どの業務で使うのか、入力する情報をどう管理するのか、出力結果を誰が確認するのかといった運用が決まっていなければ、効果は広がりにくくなります。また、既存システムや業務手順とAIをどう組み合わせるかも重要です。AIに合わせて業務の流れを見直すことは、単なるツール導入ではなく、ワークフロー※1全体の改善につながります。

例えば、毎週作成している社内報告の下書きを生成AIに作らせる場合を考えます。担当者ごとに自由に使うだけでは、確認方法や品質にばらつきが出るかもしれません。一方で、入力してよい情報の範囲、確認する項目、最終判断は人が行うといったルールを決めれば、作業時間を減らしながら品質も保ちやすくなります。さらに、削減できた時間や修正回数をKPI※2として記録すれば、AI活用の効果を数字で確認できます。
調査では、AI活用に必要な学びを自力で行う必要があると考える日本の従業員も半数に達しました。リスキリング※3を個人任せにせず、業務ルールや教育とセットで進めることも、成果を広げるためのポイントです。

IT業界に携わるわたしたちは、AIを導入したかどうかだけでなく、「どの業務で、どんな効果が出たか」を小さく測り続けることが大切です。

※1 ワークフロー:業務の一連の流れや手順。
※2 KPI:目標の達成度を測るための指標。
※3 リスキリング:新しい仕事や技術に対応するために学び直すこと。